暗号通貨業界で活躍するAptos Labsが、Layer 1ブロックチェーン「Aptos」を運営する企業であり、HashPortの傘下のハッシュポートからPallete Chainを開発するHashPalettを買収することで合意したことを、10月3日に発表しました。
「ハッシュパレットは、アプトス・ラボの関連会社として編入され、パレットチェーンはアプトスに統合されることとなりました。さらに、アプトス・ラボとハッシュポートは戦略的提携関係を築くことに合意しました。」
「パレットチェーンは、NFTの取引を中心にしたブロックチェーンとして著名です。更に、2021年7月に、国内で初めて行われた暗号資産取引所であるコインチェックにおいて、ネイティブトークン「パレットトークン（PLT）」のIEO（Initial Exchange Offering）が実施され、取引が開始されました。この際に調達された資金は9.3億円でしたが、応募金額は合計224.5億円に達しました。」
近日、2025年4月に開幕する「2025年日本国際博覧会（大阪・関西万博）」では、ハッシュポート社が提供する「EXPO2025デジタルウォレット」が導入され、その事業連携サービスにはパレットチェーンが利用されています。具体的には、JR西日本がNFTを活用した大阪環状線でのスタンプラリーを実施しています。
最適な解決策を模索
今回の買収により、パレットチェーンとハッシュパレットが取り組むアプリケーションはすべて、アプトス・ブロックチェーンに移行されます。ハッシュパレットは今年2月に、パレットチェーンの基盤となるブロックチェーンゲーム「THE LAND エルフの森」で利用される暗号資産「エルフトークン（ELF Token）」のIEOをビットフライヤーで実施しました。言い換えると、これまで国内で行われたIEO案件のうち5件のうち2件が移行されます。また、先述の「EXPO2025デジタルウォレット」は引き続きハッシュポートが提供しますが、パレットチェーンが関与する部分はアプトスに移管されます。
ハッシュパレットの親会社であるハッシュポートは、リリースの中で「今までの成果を築いた結果、パレットチェーンには様々な課題が残っていると開発チーム全体が認識しており、その根本的な解決策について熟考してきた」と述べています。
実際に、パレットチェーンのネイティブトークンであるパレットトークンのIEOにおける公募価格は、4.05円でした。そして、2022年の春には40円を超える価格まで上昇しましたが、2023年の春以降は8円前後で推移していました。しかし、今年の春から暗号資産市場全体が低迷し、パレットトークンも徐々に下落しています。公募価格を3年以上維持していた8円を8月に下回り、10月3日の朝にはコインチェックで約3.4円にまで下落しています。
「Web3の普及を促進するために、パレットチェーン上で提供されるサービスが高いスケーラビリティと利便性を持つことで、グローバルなWeb3市場に円滑に参入できるようにするため、アプトス・ネットワークとの統合が最適な解決策として選ばれました」（引用：同リリース）
日本進出を急ぐアプトス
アプトス・ネットワークは、かつてのフェイスブック（現在のメタ）が提唱したグローバル決済用コイン「Libra（リブラ）」を発展させ、後に「Diem（ディエム）」と改名されたプロジェクトに参加した、レイヤー1ブロックチェーン技術を採用しています。
7月に京都で開催された「IVS Crypto/JBW Summit」に登壇するために来日したアプトス・ラボの共同創業者兼CEOであるモー・シャイフ氏は、CoinDesk JAPANの独占インタビューで「日本で人員を拡充し、コミュニティマネージャーなどの役割を追加する予定です。開発者や起業家など、アプトス・コミュニティを構築する責任者を求めています」と述べ、日本市場への本格的な進出を計画していることを明らかにしました。
同じ日、アプトス・ラボも発表を行い、「この買収はアジアにおける事業拡大と、世界で最も革新的なデジタル経済圏の1つに先進的なアプトス・ブロックチェーンをもたらすというアプトス・ラボの戦略の重要な一部である」と述べています。
この取り決めは、アプトス・ラボが日本市場向けに特化し、拡張性、安全性、使いやすさを備えたブロックチェーン技術を提供できることを示し、日本市場への真摯な取り組みを表しています。
Web3／ブロックチェーンのダイナミズム
「日本の暗号経済オファリング（IEO）5件のうち、2件を手掛けたハッシュパレットの買収は、アプトス社の支援を得て課題を解決しようとした取り組みとも捉えられます。一方で、日本のWeb3ビジネスやブロックチェーン技術が国際的なレイヤー1チェーンとして認められ、それが日本市場への進出における重要なステップとして評価されたとも言えます。」
一般的に、日本のスタートアップ企業は、国内市場の規模が大きいために、国際展開に対する関心が低いと言われています。しかし、今回の買収は、Web3／ブロックチェーンの境界を超えたグローバルな活力を象徴しています。大阪・関西万博にとっても、ウォレットの基盤技術としてグローバルスケールのチェーンが活用されることは、ポジティブな影響をもたらす可能性があるでしょう。
「アプトス・ラボのCEOモー・シャイフは、最新リリースで、日本市場の重要性を強調し、特にパレットチェーンとの統合がAptos Labsにとって大きな意味を持つ第一歩であると述べました。アプトスの拡張可能なインフラと世界トップクラスのチームを融合させることで、日本のユーザーや開発者はエンターテインメントやデジタル分野において新たな可能性を探ることができるでしょう」と述べています。
一方、ハッシュパレット取締役会長兼創業者/ハッシュポート代表取締役CEOの吉田世博氏は「L1/L2ブロックチェーンが莫大な先行投資が求められる成熟市場に移行しつつあることを踏まえ、グローバルトップクラスのブロックチェーンであるアプトス・ネットワークとの統合は私たちのWeb3の社会実装の目標を実現させる最善の打ち手になると考えております」と述べている。さらに、ハッシュポートの今後の展望について「EXPO2025デジタルウォレットの成長と、その基盤技術であるハッシュウォレット（HashWallet）基盤の普及に経営資源を集中させ、Web3ウォレット領域における社会実装に注力してまいります」と続けた。
「現在、ブロックチェーン技術を実社会で活用する方法に課題がありますが、今回の取引により、ハッシュポートとアプトス・ラボが協力することは、来年の大阪・関西万博を見据えると、日本国内でのWeb3の普及に大きく貢献する可能性があります。」
「パレットトークン（PLT）については、11月下旬から一定の期間内にアプトス（APT）に引き換えることができます。また、エルフトークン（ELF）やパレットチェーン上のNFT、ゲームなどのコンテンツも順次移行される予定です。」
「文章：増田隆幸、写真：左から、アプトス財団のジェローム・オン氏、モー・シャイフ氏、吉田世博氏、アプトス・ラボのアレクサンドル・タン氏（提供：ハッシュポート）」
