ソニーグループは1月14日に「Web3事業発表会」を開催しました。発表会におけるプレゼンテーションや質疑応答は、以下の通りで行われました。質疑応答の際には、ソニーグループの展開やグループ会社との連携に関する質問が寄せられましたが、回答は「今の段階ではお答えできません」となりました。
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「プレゼンテーションが終わり、わずか20分しか時間がなかったが、S.BLOX社の代表取締役社長である渡辺潤氏がインタビューに応じた。渡辺氏は、ソニーグループの先端インフラ事業探索部門の部門長であり、さらにSony Block Solutions LabsのChairmanも兼任しており、ソニーグループWeb3事業の中心的な人物の一人として活躍している。」
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「──Web3ビジネスプレゼンテーションでは、ブロックチェーンの利用例として金融とゲームに焦点が当てられていました。今後は、グループ企業との協力が期待されますが、既にグループ内に金融とゲームの領域を持っている状況であり、どのような展開を見込んでいるのでしょうか。」
「渡辺氏は現時点では具体的な情報はまだ公表できません。エンターテイメントの分野では、発表可能なのは先日のプレスリリースで示された3つの実証実験のみです。公表するタイミングが到来しましたらお知らせいたします。」
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「──世界的な企業が自らブロックチェーンに取り組む事例は類を見ない。このプロジェクトは、いったいどのような段階から始まったのか。」
渡辺氏は述べています。「現在、Web3やブロックチェーン技術は、主に金融やエンターテイメント領域での利用が主流となっています。弊社はエンターテイメントを主軸とする企業であり、この領域に関わっていくことは比較的自然な流れでした。」
「──ソニーグループ内のソニー銀行はすでにNFTを発行したり、Web3エンターテイメント向けアプリ「ソニー銀行コネクト」をリリースしています。それらとの連携はどうなっていますか。」
渡辺氏は述べました。「今後の話になりますが、グループ内で様々な話が進行しています。ソニー銀行のアプリは、ソニーグループのNFTマーケットプレイスであるSNFTと連携し、今日発表されたFan Marketing PlatformもSNFTが展開しています。」
Web3への窓口に

「Soniumeの昨年8月の発表以降、海外からの問い合わせが増加しているという情報を耳にする。」
「渡辺氏は述べています。ソニー自体も取引先の多くは海外にあり、日本よりも大規模です。また、クリプト関連のユーザーも海外の方が日本よりもかなり多いため、それは自然なことだということです。もちろん、国内からも期待以上の反応があったということです。」
「ブロックチェーンはオープンな技術ですが、ソニーが関与するという要素によって、参入障壁を感じる部分もあったのではないでしょうか。」
「渡辺氏は、我々が気にしているかどうかはわからないけれども、参入しやすいWeb3の世界を手助けしていることで、興味を持っている方がいるかもしれないと考えています。最近、いくつかの企業との議論で、そのような話題が結構出ていると感じているそうです。」
「──ソニーグループが提供する安心感を感じているのかもしれませんね。」
「渡辺氏は、各企業によって異なるかもしれないが、我々には安心感を抱く人もいると考えています。クリプトの世界に詳しくない人々にとって、我々はWeb3へのアクセスポイントになっていると考えています。」
──業種や業態に特徴はあるのか。
「渡辺さんによると、特に明確な偏りはないそうですが、ややエンターテイメント関連の記事が多めだそうです。ゲームに限らず、エンターテイメント全般の記事が多いようです。現時点でDeFi(分散型金融)以外の活用例を考えると、ほとんどがエンターテイメント関連のものだとのことです。」
日本においてDeFiが複雑な状況にあるが、将来において可能性を秘めるためには、何が不可欠であるか。
渡辺氏は法整備が重要であると述べており、日本でも将来的に期待できる可能性を感じていると語っています。彼はDeFiがブロックチェーン技術の重要な機能の一つと位置付け、S.BLOXのビジネスにおいてもDeFiの範囲は広いとしながらも、どこまでがDeFiとみなすかについては議論があると述べています。具体的な動きについてはまだ決定していないとしています。
暗号資産取引サービスとしての戦い方
「S.BLOXは、仮想通貨取引サービスとして、国内市場においてどのような戦略やアプローチを計画しているのでしょうか。」
渡辺氏の言葉を言い換えると、「Web3空間に参加してもらうためには、ユーザーが法定通貨を暗号資産に交換する必要があります。現状、各サービスの使い勝手や統一感が乏しい状況であるため、ユーザーがWeb3に参入するのは困難です。初めの一歩がハードルが高いので、この課題を解決するためには暗号資産の交換サービスが必要だと考えています。特定企業での取引指示はユーザーにとって敷居が高いため、ユーザーにとってよりスムーズな体験を提供することが重要です。」

“国内には2社の取引業者が必要であるというような意見が出されており、将来的に、資金決済法から金融商品取引法への規制枠組み移行により、対応が難しくなる事業者も出現する可能性があります。このような競争が激化する状況に対処する方法について、どのように考えていますか?”
渡辺氏は、自社グループが金融分野に関わっているため、その部分についてはあまり心配していないと述べています。彼の考えでは、シェア獲得は大切ではあるが、まずはユーザー体験の向上に注力し、可能な限り多くのユーザーがWeb3に参加しやすい環境を整えることが重要だと考えています。現在取引所を利用しているユーザーは既に理解が深いため、それらのシェアを奪うよりも、まだWeb3や暗号通貨に触れたことのない人たちに「Web3の世界は楽しくて便利だ」と伝え、そうしたユーザー層を獲得することに焦点を合わせています。このため、一つ一つ着実に、様々なアプローチを試みていきたいと述べています。
「──2025年におけるWeb3業界の展望について、どのように考えていますか。」
「渡辺氏は、国内ではステーブルコインが注目を集める1年になると予想しています。ステーブルコインの普及がどれだけ進んでいくかは、ユーザー層を拡大する重要な要素であると考えています。世界全体では、国によって状況は異なりますが、暗号通貨を支払い手段として利用する頻度や金額はますます増加していくと見込んでいます。支払い手段としての機能がさらに拡大すると予想されています。」
現在、私たちはSoniumeに取り組んでいますが、レイヤー2とレイヤー1の境界がますます曖昧になっており、今後、さまざまな企業がブロックチェーンに参入していく可能性も考えられます。
|文・編集:増田隆幸
|撮影:多田圭佑