米Securitize(セキュリタイズ)の共同創業者兼CEOのカルロス・ドミンゴ(Carlos Doming)氏は、オンチェーンファイナンスはもはや“仮説”ではなく、急速なインフラの改善と市場環境の変化を原動力として、真の変革が始まる道筋が開かれていると述べている。
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RWA(実物資産)のトークン化は、PoC(概念実証)のフェーズを過ぎた。200 億ドル(2兆9000億円、1ドル145円換算)を超えるトークン化資産と、アポロ(Apollo)、ブラックロック(BlackRock)、ハミルトン・レーン(Hamilton Lane)、KKR、ヴァンエック(VanEck)といった大手資産運用会社などに代表される機関投資家のモメンタムによって、オンチェーンファイナンスはもはや“仮説”ではなくなっている。急速なインフラの改善と市場環境の変化を原動力として、真の変化が始まる道筋が開かれている。
今後3年のトークン化の流れを形作る技術的要因と市場要因をそれぞれ5つずつ見ていこう。
技術的要因
1. ブロックチェーンインフラの成熟
レイヤー1およびレイヤー2は急速に拡大し、取引手数料の削減とUXの改善を実現している。ウォレットのシームレスな使用、アカウント抽象化、取引手数料の削減により、機関投資家も個人投資家もトークン化資産をスムーズに保有できるようになる。
2. スマートコントラクトの進化
スマートコントラクトはより安全、より組み合わせ可能になり、自動化が進んでいる。利回り、コンプライアンス、資産管理を支えるスマートコントラクトの設計や監査にAIが活用されるようになり、人的な監視は削減される。
3. オンチェーンIDの統合
ウォレットに連携したKYC(本人確認)と分散型IDプロトコルは、プライバシーを損なうことなくオンボーディングを簡素化し、機関投資家の採用と個人投資家のアクセシビリティのための大きなブレークするーとなる。
4. 機関投資家グレードのカストディ
MPCウォレット、リカバリープロトコル、規制済みのカストディといった選択肢が、長年のカストディに関する懸念を解消し、トークン化資産が大規模に投資可能な資産として真に確立する。
5. マーケットプレイスと取引所の統合
SECが認可したATS(代替取引システム)で取引されるトークン化資産が増え、コンプライアンスに準拠したDEX(分散型取引所)を通じてオンチェーンで利用可能になることで、流動性と透明性が向上する。
市場動向
1. 規制の明確化
米国、EU、APACの規制当局は、トークン化証券、ステーブルコイン、DeFi(分散型金融)のための枠組みを整備している。規制明確化とともに、機関投資家の信頼も高まることになる。
2. トークン化国債 > ステーブルコイン
トークン化米国債(例:BUIDL、VBILL)は、優れた担保資産および利回り商品として台頭しており、機関投資家グレードの安全性と資本効率を提供している。
3. グローバル決済層としてのステーブルコイン
流通額が1500億ドル(約22兆円、1ドル145円換算)を超えるステーブルコインは、ブロックチェーン間での即時決済、財務資金調達、為替取引を可能にする「プログラムブル・キャッシュ」へと進化している。
4. すべての資産クラスへ
公開株、未公開株、債券、クレジット、不動産、商品がすべてオンチェーンに移行している。トークン化は、利回り商品から資本構造全体に拡大している。
5. 機関投資家と新興市場における加速
ウォール街はトークン化インフラのパイロットプロジェクトを積極的に進めている。一方、新興市場はダイレクトにブロックチェーンを利用することで、レガシーシステムをリープフロッグ(一足飛びに先進技術を活用すること)している。
結論
RWAトークン化の次のフェーズは、スケーラビリティ、コンポーザビリティ、信頼性が推進する。機関投資家は、トークン化に取り組むべきか否かではなく、いかに早く実現できるかを問うようになっている。その結果、トラストレスな基盤の上に構築され、プログラマブルな資産がエンジンとなる24時間365日アクセス可能なグローバル金融システムが実現する。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Joshua Earle/ Unsplash+
|原文:What’s Next for Real-World Asset Tokenization