「暗号資産取引が広まる中、多くの投資家が見落としがちなのは税金の取り扱いです。所得税は1年間の所得に対してかかるため、対策を行うには今が最適なタイミングと言えます。」
この記事では、仮想通貨投資における税金対策の効果的な方法に焦点を当て、年内に実施すべき重要なポイントを5つ紹介します。
1. 含み損益の把握と適切な売買戦略
「仮想通貨の投資において、未実現の利益や損失を理解し、適切に管理することは税務対策のカギとなります。」
「その理由は、未実現損益を正確に把握し、年末までに適切な取引を行うことで、当年の利益を減らして税金を節約したり、将来の税負担を均等化することも可能だからです。」
仮想通貨の収入は通常、総合課税の「雑所得」として扱われ、他の収入とは損益を相殺することができません。ただし、同じ「雑所得」同士では損益を合算することができるため、仮想通貨同士の取引などで利益を調整することが可能です。
含み損益の計算方法
「含み損益」とは、所有している暗号通貨の現在の価値と取得価格の差額を指し、それが実際に売却されるまでの間は「含み」の状態にあるということです。
「未実現損益」とは、仮想通貨の現在価格と取得価格の差額を、保有数量で乗じたものです。
たとえば、500万円で1BTCを購入し、現在の価格が1,000万円である場合、含み益は500万円になります。
「仮想通貨の利益や損失は、各コインごとに個別に計算する必要があるため、複数の通貨を保有していたり、複数の取引所で同じコインを持っている場合、このような計算は容易ではなく、煩雑で複雑になります。」
このような状況では、仮想通貨の利益と損失を計算するためのツールである「クリプタクト」のような利益と損失を計算するツールを活用することをお勧めします。
損益圧縮のタイミングと方法
「では実際にどのような状況でどんな取引が有効かを紹介いたします。」
「1. 年内に大きな利益を得た場合には、含み損がある仮想通貨を売却して損失を確定させることで、全体の利益を抑えることができます。」
「2.年内の収益が少ない場合(含み損が大きい):含み益のある仮想通貨を売却して収益を確定させ、翌年からの税金を均等に分散することも一考です。」
2. 経費の計上
「暗号資産の取引に関わる費用を正しく帳簿に記載することで、課税される利益を軽減することも、重要な対策の一つであることを心に留めておくべきです。」
経費として認められる主な項目
仮想通貨を取得する際に支払う手数料
売却時に負担する売却手数料
1. 送金時に支払う送金手数料
2. 売却時に発生する手数料
3. 送金時に負担する送金手数料
など。
「適切に経費を記録し、確定申告の際に計上することで、税金を節約することができます。ただし、すべての費用が経費計上可能とは限りませんので注意が必要です。」
「経費に組み込めるか不明な費用については、税理士に相談して決定することが良いです。特に、令和4年のFAQ改訂により、経費に組み込める範囲が限られた可能性があるため、経費計上の可否に関してしっかりと相談することが大切です。」
3. ふるさと納税の活用
「暗号通貨取引によって得た利益は、雑所得として総合課税の対象となり、他の所得と合算されて課税されるため、ふるさと納税の上限額も増加します。」
ふるさと納税において、税金の支払先が変更されるだけで、税負担そのものは変わりませんが、実際には2000円という自己負担でさまざまな特典を受け取ることができるという利点がございます。また、仮想通貨の所得による上限額の拡大がある場合、その上限を理解したうえで、適切な寄附額を使って、よりお得なふるさと納税を行うことが可能と言えます。
「ふるさと納税の寄附は365日受け付けていますが、たとえば2024年の寄附として申告するには、2024年12月31日までに寄附が完了している必要があります。既に今年度ふるさと納税を活用している方は、年末までに仮想通貨の収入を含めた上限額を確認し、上限に達していない場合は追加の寄附を検討することをおすすめします。」
仮想通貨の利益損失を計算するツール「クリプタクト」や無料の「暗号通貨税金シミュレーションツール」を使えば、給与所得と仮想通貨収益を合算した場合のふるさと納税の上限額(おおよその金額)も手軽に計算することができます。
気になる方はぜひ試してみてください。
4. その他の税金対策
法人化の検討
「暗号資産取引が大規模になると、法人格の取得を検討するメリットがあるかもしれません。」
メリット:
「- 経費の認識範囲が拡大する可能性がある- 所得に応じて、税率が個人よりも有利になる可能性がある- 損失の繰越期間が長い(個人の場合は損失の繰越ができないが、法人の場合は最大で10年間繰越可能)」
デメリット:
– 設立や維持に費用がかかる
– 会計処理が複雑化する
– 社会保険料の負担が増大する可能性がある
法人を設立しただけでは、法人としての取引が完了するわけではなく、法人名義で仮想通貨取引所を開設したり、個人名義の仮想通貨を法人に移す際の課題があります。法人設立を検討している場合は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
年間20万円未満の利益確定戦略
一般的なサラリーマンの場合、仮想通貨の利益が年間20万円未満であれば、確定申告は必要ありません。この制度を利用することで、手間を省くために年間の利益を20万円未満に抑えることができます。
同様に、利益を少しずつ処分していく戦略も効果的です。仮想通貨の利益は雑所得として税金がかかるため、利益が多いほど高い税率がかかります(累進課税)。この税金負担を軽減するために、毎年少しずつ利益を確定させていく方法も効果的です。
5.税金対策を行うために必要な準備
「これらの対策を実施する際には、事前に次の点を確認することが重要です。」
取引履歴のバックアップ取得
「仮想通貨の収支を計算する際には、詳細な取引履歴が重要です。」
「以下の情報にアクセスできるようにしておきましょう。」
「1. 取引所の履歴取得: 利用中の全取引所から取引履歴を取得します。多くの取引所では、CSVファイルなどの形式でデータが提供されます。」
「2. ウォレットの転送履歴の記録: 取引所以外でのウォレット間の転送も履歴として残します。特に、ハードウェアウォレットを利用する際には注意が必要です。」
「3. DeFi取引の履歴記録: DeFiプラットフォーム上で行われる取引もちゃんと記録しておきましょう。これらの取引は自動的に履歴が残らないことがあるので、手動で記録する必要があります。」
「4. NFT取引の記録: NFT(非代替性トークン)の売買取引についても課税の対象となるため、取引の時に記録を取っておく必要があります。」
「記録管理は取引が増えれば増えるほど、手動での管理が困難となります。」
このようなケースでも、仮想通貨の利益損失を計算するためのツールである「クリプタクト」を使用すれば、APIを利用して取引所のデータと連携し、自動的に反映させたり、ウォレットに接続してDeFiやNFTの取引履歴をインポートして管理するなど、手間を大幅に削減することができます。
取引履歴が欠けた場合の対処法
もしも取引履歴の一部が失われた場合には、次の手順で問題を解決することができます:
1. 取引所のカスタマーサポートに連絡して、取引履歴の再発行をリクエストする
2. ブロックチェーンエクスプローラーを使って取引を追跡する
3. 銀行の入出金履歴を参考に取引を推定する
「しかしながら、これらの手法でもデータの完全な回復が困難なケースがありますので、定期的なバックアップの作成が非常に重要です。」
まとめ
「仮想通貨の課税対策は、常に意識すべき重要なテーマです。特に年末に近づくにつれて、以下のポイントを把握しておくことが重要です:」
1. イン・ザ・マネー/アウト・オブ・ザ・マネーを把握し、適切なエントリー/イグジット戦略を立てる
2. 取引に関わるコストを正確に記録し、帳簿作成の準備を整える
3. 税の節約策として、ふるさと納税を活用するメリットを検討する
4. 法人設立や年間20万円以下の戦略など、自身の状況に合わせた対策を講じる
5. 取引履歴のバックアップを確実に作成する
「これらの対策を適切に実施することで、余分な税金を回避し、効果的な資産運用を促進できます。ただし、税法は複雑で頻繁に変更される可能性があるため、常に最新の情報を確認し、必要に応じて税務の専門家である税理士などに相談することをおすすめします。」
「文章:伊藤里香(pafin編集) 監修:村上裕一
税理士として活躍する村上裕一氏が監修。大手監査法人および税理士法人での豊富な経験を積んだ後、Web3(ブロックチェーン、暗号資産・仮想通貨、NFTなど)に特化した専門税理士として、多くのクライアント(個人や企業)を支援しています。株式会社pafinの仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」のブログの監修も行っており、「仮想通貨(暗号資産)に関する税金の基本や計算方法、対策について解説」しています。」
「※編集部の注釈:CoinDesk JAPANでは「仮想通貨」という表記を用いていますが、本文では原文の表現を尊重しています。」