「イーサリアムが時代遅れになってしまったのか？」

「2024年10月に差し掛かり、暗号資産市場が大きく変遷する中で、多くの人が「イーサリアム（ETH）はもう終わりなのか？」と疑問を持っています。しかしながら、この問いに解を導くには、イーサリアムの進化や現在の状況を正しく理解する必要があります。」

この記事では、イーサリアムの特性や課題、将来展望に焦点を当てつつ、ETHが既に過去のものであるのか、それとも今後も成長が期待されるのかを探っていきます。

イーサリアム（ETH）とは

まず、イーサリアムの基礎について振り返りましょう。2013年にヴィタリック・ブテリン氏によって構想され、2015年7月にローンチされた暗号通貨であるイーサリアム。現在のETH価格は38万7707円であり、時価総額は約45.58兆円で、時価総額ランキングでは2位を維持しています。イーサリアムはビットコインに次ぐ存在感を持ち、世界的に人気の高い暗号通貨プロジェクトとされています。

その大きな魅力は、自動契約機能であるスマートコントラクトを利用できる点です。これにより、開発者はイーサリアムブロックチェーン上でさまざまな分散型アプリケーション（dApps）を開発することができます。特にDeFi（分散型金融）やNFT（非代替性トークン）の急速な成長により、イーサリアムはこれらのプロジェクトの主要プラットフォームとして利用され、過去数年で著しく発展してきました。

「なぜ人々はイーサリアムが過去のものだと考えるのか」

イーサリアムが「過去のトレンド」とみなされる理由は、以下の要因が考えられます。

最高値を更新できていない価格推移

「2021年11月、仮想通貨市場がバブル状態になり、ETHの価格は最高値の4,900ドルを記録しました。ところが、その後のバブル崩壊で価格が半減し、その後の市場の低迷により、イーサリアムは約2年間に渡り停滞状態となり、成長の兆しは見られませんでした。この状況により、一部の投資家からは「イーサリアムはもう時代遅れだ」という声も挙がりました。」

高いボラティリティ

「イーサリアムなどの暗号資産は価格変動が激しいため、時折「オワコン」と揶揄されることがあります。確かに、暗号資産は暴落して価値を失うこともあり、イーサリアムにもそのような議論があります。しかし、過去のイーサリアムの価格変動を長期的に眺めると、一連の暴落を経ても、長期的には安定的に成長していることが示されています。」

「関連記事: イーサリアムの価格予測 | 2024年、2025年、2030年」

「「イーサリアムのライバル」として知られる存在」

「イーサリアムに対抗しようとする競合プロジェクトが増えており、一部では「イーサリアムキラー」と呼ばれる主要なライバルが現れています：」

• ソラナ（SOL）
• アバランチ（AVAX）
• スイ（SUI）

これらのプロジェクトは、手数料が少なく、トランザクションの処理能力が高いことが特長となっており、そのために、開発者やユーザーがイーサリアムから移行する傾向が高まっています。

ただし、現時点では、時価総額でイーサリアムに迫る存在は見当たらず、むしろ、2022年9月にPoS（Proof of Stake）への移行を達成したことにより、イーサリアムがエネルギー消費やスケーラビリティの課題に取り組む姿勢が高く評価されています。

関連記事：Proof of Stake（PoS）とProof of Work（PoW）の違いや利点・欠点について説明

NFTブームの下火

2021年には、「BAYC」や「CryptoPunks」といったNFTが高値で取引され、ブームを巻き起こし、2022年には日本でもNFTが急激に盛り上がる状況になりました。しかし、2023年にはNFTの価格が急激に下落し、ブームが収束すると、「イーサリアムも終わりだ」という声が広まりました。また、かつてはNFTと言えばイーサリアムが中心でしたが、2023年にはビットコインNFTが台頭し、イーサリアムがあまり使用されなくなったことから、「もうイーサリアムは時代遅れなのか？」との声も上がっています。

暗号資産市場全体の関心の低下

2017年から2018年にかけての仮想通貨市場のバブル期には、テレビ広告も盛んに流れ、市場全体が活況を呈していましたが、その後、バブルが崩壊し、関心が急速に低下しました。2021年には市場が再び急騰し、注目度が高まりつつありましたが、その勢いも一過性であり、2023年以降は価格の調整が続いています。

日本では、暗号資産市場への関心がかつてのバブル期と比べて減少しており、AIなど他の新興技術セクターが活況を呈しているため、一部の投資家の間で「暗号資産全体が終焉の兆しを見せている」という見方が広がっている。

「イーサリアムは本当に衰退しているのか？　その特徴と将来性について」

「しかし、イーサリアムには多くの利点があり、その将来への期待も高まっています。」

「イーサリアム実物拠出型上場投資信託（ETF）の認可と、機関投資家による利用の拡大」

2024年、米国証券取引委員会（SEC）は、ブラックロックやフィデリティなどの大手資産運用会社が提出した8つのイーサリアム現物ETF申請を認可しました。この決定は、ビットコインETFの承認に続くものであり、仮想通貨市場にとって重要な節目となりました。この認可により、多くの機関投資家が参入し、ETFへの資金流入が大幅に増加しました。

具体的には、2024年7月に取引が開始されて以降、9月のイーサリアムETFには数週間で8460万ドルの資金が流入し、8月9日に最大の資金流入を記録しました。これらの資金流入は、暗号資産市場の活性化と回復への期待が高まっていることを示しています。

さらに、暗号資産運用大手であるブラックロックが「iShares Ethereum Trust（ETHA）」というETFのオプション商品の取引を始める準備を進めており、投資家の注目を浴びています。ただし、このオプション取引の承認はまだ審査中であり、取引開始は未定です。SECによる最終判断は2024年11月10日と11日に延期されています。

大企業によるイーサリアムの採用

「イーサリアムは、非営利団体である「イーサリアム企業連合（EEA）」の支援を受けており、500社以上の企業が加盟しています。この連合には、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友銀行、トヨタ自動車、マイクロソフト、JPモルガン、インテルなど、世界の主要企業が所属しています。さらに、Visaは金融機関向けにイーサリアムを利用した法定通貨担保トークン発行プラットフォーム「VTAP」の展開など、実用的なトークン化資産の導入を推進しています。2025年には、イーサリアム上でのパイロットテストも予定されており、Visaは24時間体制の資金移動やクロスボーダー決済などのユースケースを想定しています。」

「このような大手企業の参入や活用によって、イーサリアムのエコシステムがさらに拡大する可能性が高く、今後ますますその利用範囲が広がると期待されています。」

「ステーキングの報酬率と米国の金利が逆転する可能性」

2025年までに、イーサリアムのステーキング収益率（CESR：ブロック報酬と取引手数料の合計）が、米国の金利（EFFR：実効連邦ファンド金利）を上回る可能性があるとの見方があります。ファルコンXの報告書によると、2023年6月以降、現在のスプレッドはマイナスになっていますが、2025年までにはプラスに転じる見込みです。この見通しの背景には、米国の金利が今後も低下する可能性や、イーサリアムの取引手数料とステーキング収益率の上昇が挙げられています。

具体的には以下の点が影響します：

• 米国金利の低下：“CME（シカゴ・マーカンタイル取引所）の情報によると”、2025年3月までに米国金利が3.75%を下回る可能性は85%、さらに6月までに3.5%まで低下する確率は90%に達する見込みです。
• 「ステーキングリワード率の増加：今のイーサリアムのステーキングリワード率はおおよそ3.2%程度で推移しており、取引手数料が増加することでそのリワード率が高まる可能性があります。」

米国の利上げ率との差がプラスになると、これまでの安定な資産よりもステーキングがより魅力的な選択肢として投資家に注目されます。ただし、ファルコンXはステーキングの収益率が上昇しても、ETH価格の回復に影響を与える主要因ではないと指摘しており、むしろDeFiの基盤の成長に期待が寄せられています。

ネットワークの拡張とレイヤー2ソリューションの導入

Dencunアップグレードとその影響

2024年3月、イーサリアムは「Dencunアップグレード」を実施し、ネットワークのスケーラビリティと取引コストの削減に大きな進展を遂げました。特にL2（レイヤー2）ソリューションの利用が増加し、1日のトランザクション数と月間アクティブユーザー数が2倍に増加しました。L2は、メインのブロックチェーン（レイヤー1）の負荷を軽減するために取引を処理する仕組みであり、Dencunの導入によってネットワークの効率性が大幅に向上しました。

しかし、その結果、イーサリアムの第1層（L1）の収益は減少しています。Token Terminalのデータによれば、Dencunの導入以降、ETHの収益は99%も急落し、3月5日の3,550万ドルから8月末には56万6,000ドルにまで減少しました。またCoinSharesのレポートによると、第2層（L2）ソリューションの急速な普及は、イーサリアムの第1層ネットワークのトランザクション需要を奪うリスクもあります。実際、「EIP-4844」によってL2の取引手数料が下がったことで、L2の魅力が高まっていると指摘されています。

この収益モデルの移行により、イーサリアムは今後、トランザクション手数料に依存する収益よりも、L2ネットワーク内の支払いレイヤーとしての役割を強化し、新たな収益源を確保する必要があるとされています。

次期アップグレード「Pectra」

2025年初頭に予定されている「Pectra」のアップグレードは、2段階で進行中です。最初の段階である「Pectra 1」では、イーサリアムの使いやすさが向上する予定で、ネットワークの効率改善、セキュリティ強化、トランザクションの利便性向上などが含まれます。そして、次の段階である「Prague」では、実行レイヤーが強化され、「Electra」ではコンセンサスレイヤーが改善される予定です。さらに、「PeerDAS」の導入により、データの一貫性と可用性が向上する見通しです。

「また、EIP3074の導入により、ウォレット機能の拡張とトランザクションの効率化が実現されます。具体的には、複数の操作を1つのトランザクションにまとめる機能や、「スポンサー付きトランザクション」の採用などが含まれており、ウォレットやdAppsとの連携がスムーズになります。」

さらに、バリデータが保持できるETHの最大量が32ETHから2,048ETHに増加される予定であり、これにより大規模なステーキングプロバイダーが効果的にネットワークに参加し、スケーラビリティと安定性が向上することが期待されています。

イーサリアムの課題と今後の展望

エコシステムの偏りと実用性の促進

暗号資産投資企業のCoinSharesによると、イーサリアムのエコシステムは拡大しているものの、ネットワーク内での取引に偏りがあると指摘されています。現時点では、NFT取引やマイナー向けの暗号資産取引が注目を集めており、ユニスワップが取引手数料の市場シェアを最も多く占めています。

「今後の課題として、ネットワーク上でさまざまな利用シーンに対応し、ユーザーに持続的なメリットをもたらすことが重要とされています。」

ステーキングの需要

「ステーキングの需要には、SECによるイーサリアム現物ETFの承認が影響しています。2024年5月に現物ETFが承認されましたが、規制上の問題からETF発行会社はステーキングに関する情報を抑えています。」

したがって、機関投資家によるステーキング需要は現在制約されていますが、将来の市場状況や規制の変化によってどのように変化するかに注目すべきです。 Real Visionのアナリスト、Jamie Coutts氏によると、ETFの規制が不明確であるため、機関投資家によるステーキングの大規模な参入はしばらく先の可能性が高いと述べられています。

まとめ：イーサリアムはオワコンではない

イーサリアムは、様々な課題や競争相手に直面しているが、同時に強固なネットワークと成長の可能性を持ち続けていることが分かる。価格の停滞や高いボラティリティ、低い手数料と高いトランザクション処理能力を持つ「イーサリアムキラー」と呼ばれる競合の台頭、NFTブームの終息、暗号資産市場全体の失速が挙げられるが、イーサリアムには将来性が期待される要素が多く存在する。具体的には、米国での現物ETF承認や大手企業の参入、ステーキングの利回り上昇、ネットワークアップグレード（Dencun、Pectra）によるL2ソリューションの展開など、ポジティブな動向が続いている。

したがって、「イーサリアムは過去の流行に過ぎず」と断定するには早計であり、改良によって持続的な発展が期待されるため、今後も仮想通貨市場の主要な存在としての地位を維持する可能性が高いと言えます。

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