SBIホールディングスの最高経営責任者であり社長である北尾吉孝氏は8月29日、WebX2024で講演し、SBIグループがWeb3に向けて進めている取り組みを紹介しました。プレゼンテーションの終盤では、Oasys Pte. Ltd.(以下、Oasys)との戦略的パートナーシップの締結を発表し、大きな注目を集めました。
「北尾氏の告知に続き、WebXの舞台にて、SBIとOasysの提携の経緯や目的、今後の活動に関して、Oasysの代表である松原亮氏と、2023年3月にOasysと提携を発表し、同年5月に暗号資産オアシス(OAS)を上場させたSBI VCトレードの代表取締役社長である近藤智彦氏に取材した。」
「シナジーを生み出し、国内基盤を強化して国際展開を目指す」

「──今回の連携について、話し合いはいつごろから進んでいたのですか。」
「松原氏は、約2ヶ月前から、暗号資産オアシス(OAS)がSBI VCトレードに上場するなど、サービス連携を進めていた。当社は将来の成長を見据えた資金調達を進めており、世界の動向を分析すると、中華圏では取引所を中心とした活動が見られ、欧米ではアメリカのベンチャーキャピタルが市場の発展を支援している。そして、日本を見ると、Web3に積極的で資金力に恵まれ、実際にサービス展開しているパートナーとしてSBIグループを挙げるほか思い当たる企業はない、と述べた。」
「近藤さんは、グループ内にベンチャーキャピタルがあり、直接投資が可能なエンティティも存在し、さらに暗号資産交換業も行っているというのは、かなり珍しい存在だと考えています。」
松原氏は言います。「当社は取引所、NFTマーケットプレイス、ウォレット、そしてマーケットメーカーを提供しています。単純に出資するだけでなく、様々な相乗効果も期待できます。私たちは従来の金融サービスである銀行や証券を主要な展開項目としているため、将来的にはそのようなサービスと連携する可能性があると考えています。」
「─1月には中華圏進出を目指すコンサルティング企業と提携し、2月には韓国の大手ゲーム企業と提携し、6月には米国テキサス州で開催された『Consensus 2024』で独自のセッションを行うなど、積極的に海外展開を進めてきた。ついに日本市場に注力する時が来たと感じています。」
松原氏は、「いよいよ」というわけではなく、元々日本ではトークンを保有する人が多いと考えており、日本国内で強力なパートナーやサポーターを見つけたいと考えていました。今回のSBIとの提携で、地盤固めを行い、今後はアメリカをはじめとして、世界に展開していきたいと考えています。
「──昨日、SBIがdouble jump.tokyoへの投資を発表し、そして今日はOasysとの提携、加えてこれまでそれほど力を入れていなかったゲーム関連の発表が続いた。これらの連続した動きには何らかの背景があったのだろうか。」
「近藤氏は述べています。グループは元々ベンチャーキャピタル出身であり、有望な企業やプロジェクトにはどんなジャンルでも投資しています。double jump.tokyoは、SBIインベストメントがシリーズDの資金調達を主導し、株式に投資しました。一方、Oasysはトークン投資を行うため、SBI VCトレードを通じてグループから出資を受けました。トークン投資は以前から行われてきましたが、今回のような大規模な取り組みは初めてでした。グループ全体として、様々な機能を備えていることから、各部門が有機的に連携し、今回の取引が実現したとの考えです。」
世界の第一線、メインストリームを目指す

「今回のSBIとのパートナーシップにおいて、Oasysがもっとも期待している点は何ですか。」
松原氏は、過去にSBIと深く関わってきたプロジェクトとしてリップルが挙げられると述べています。「XRP」はリップルによって開発された暗号資産であり、その時価総額は常にトップ10にランクインしています。これを踏まえて、我々はSBIと連携し、世界の暗号通貨市場の最前線であるメインストリームに進出したいと期待しています。
「現在でも、近藤氏は外部最大株主として、RippleLabs(通称リップル社)に関与しています。SBIグループはこれまでにそのような経験を積んできたため、暗号資産オアシス(OAS)の発展に協力し、推進していきたいと考えています。」
「現在のトップ10リストでは、時価総額が1兆円を超える企業がランクインしています。このような大規模な企業になるためには、1兆円以上の時価総額を目指し、一般市場に浸透していくために具体的にどのような取り組みを行うべきでしょうか。」
松原氏は、「今年は、よく知られたゲーム会社から多くのコンテンツがリリースされ、それにより需要が高まるでしょう。この需要には弊社の強みが活かされ、一部は既存のWeb2ユーザーが新たなWeb3ユーザーに移行する可能性もあります。さらに、需要に加えて一定の投機的要素も見込まれ、OASの流動性向上と価格上昇も期待されています。」
「今後は開発者コミュニティに重点を置いて取り組んでいきたいと考えています。具体的には、世界各国でハッカソンを展開することを目指しています。開発者コミュニティは主にゲームに焦点を当てていますが、必ずしもそれに限定されているわけではありません。例えば、急激なインフレーションが進行している国では、暗号資産が生活の必需品として位置づけられ、生活を支える役割を果たしています。このような国々では、その重要性ゆえにサービスの開発がしやすい状況です。こうした状況において、SBIグループの資金力や当社が持つIP権などといったリソースを組み合わせ、インキュベーションプログラムなどを推進していける可能性があると考えています。」
「しかし、昨年はIVS Cryptoで多くの発表がありましたが、その後1年が経過しました。今後はさらに多くのコンテンツが登場する予定ですので、その成功に向けて積極的に投資していきたいと考えています。」
「─一方、SBIによる期待の見方はどのようなものでしょうか。」
「近藤氏は、すでに多くのサービスと連携しているが、今回Oasys社とdouble jump.tokyoにも資金が提供されたことで、さまざまな取り組みが迅速に進展すると期待しています。この状況下で、SBI VCトレードチームとしては、個人投資家に向けて、使いやすいウォレットを提供することで、ゲームNFTの取得をより容易にするなどの取り組みを行っていきたいと考えています。また、グループ内のマーケットメーカーとして、OASの流動性を向上させる支援も行う予定です。さまざまな取り組みが有機的かつ迅速に進展することを期待しています。」
日本のマーケットのポテンシャル

「──Web3ゲームやブロックチェーンゲームの成功は、多くの人々が注目している。その火付け役となる要因は何だろうか。」
「松原氏は、日本の暗号通貨市場には巨大な成長ポテンシャルがあると見ています。実際、参入時の購買力は非常に高いです。たとえば最近、コロプラ傘下の子会社が展開するPlay to Earn(P2E)ゲーム「Brilliantcrypto」のトークンが、Coincheckで行われたIEOで、10分ほどで目標額の15億円を調達しました。結果的に応募額は20倍の300億円を超えました。海外の主要暗号資産取引所のローンチパッドよりも、日本の購買力は強力です。しかしながら、現時点では、IEOにおける購買力は大きいものの、税金などの問題で2次市場の取引量はまだ十分ではないと指摘されています。」
「そういった課題が解決されれば、日本は非常に魅力的な市場になるでしょう。コンテンツは売れており、最近登場したWeb3ゲームには10万人単位のユーザーが集まっています。唯一の課題は流動性です。現時点では、海外の流動性も含めて構築する必要がありますが、日本市場が成長すれば、我々の強みを更に活かすことができるでしょう。実際、FX取引では日本のユーザーは世界有数の規模を誇っています。税制などの課題が解決されれば、二次流通も拡大すると考えています。」
近藤氏によると、2017年には、暗号資産の取引において円が世界的に1位のシェアを獲得していました。すべてが規制の影響だけではないものの、個人投資家による取引量の増加が重要です。現在はレバレッジが2倍に制限されていますが、業界全体としてその緩和を求めているとのことです。
「今年は1月に米国でビットコインETFがスタートし、春にビットコイン価格が1000万円を超えるなど、暗号資産への関心が高まっています。国内の口座数も1000万を超え、当社も口座開設が過去最高のペースで伸びているため、今後リテール取引が拡大していくと見込んでいます。SBIグループは、リテール取引だけでなくOasysと提携し、エコシステムの拡大を支援する機能も持っており、その強みを活かし続けたいと考えています。」
「──6月に開催された「Cousensus 2024」で、独自のセッションを行いました。Oasysの国際的な評価と今後の取り組みについてお伺いしたいと思っています。」

「松原氏は述べました。恐らく当社の知名度が高いのは、日本と韓国、そしてゲーム業界です。暗号通貨業界は今、欧米系トレーダーと中華系トレーダーが主流ですが、我々はまだそこには達していません。今後、その領域に参入したいと考えています。」
「現在の暗号市場において、取引高やETFなどのニュースが、主に欧米から先行しており、欧米で生まれた動きが国内にも波及している傾向があります。この流れの中で、流動性について議論がありますが、大手暗号資産マーケットメーカーであるB2C2は、SBIグループが90%の株式を所有し、イギリスに本社を置きながら、米国と日本にも拠点を持っています。さらに、彼らはフランスの同業他社を買収しています。国内ではSBI VCトレードがマーケティングをサポートし、海外の取引所やOTC取引業者には、B2C2のような企業がグローバルにアプローチできる仕組みが整っています。以前、松原さんとのウェビナーを開催しており、現在は新たな調整を行っています。」
「実際に投資を考えているお客様に、Oasysの思想や方向性、そして今後登場するゲームについて、グローバルに情報を提供していきたいです。私自身もゲーマーであり、日本から生まれたゲームを支援し、日本が誇る文化の一翼を担いたいと考えています。ゲームは日本の誇る文化の一つであり、その大衆への普及をサポートできることを楽しみにしています。」
「松原氏は、今年は米国の大統領選挙も控えており、市場が活気づいていくと予想しています。今回の提携を契機に、グローバルで競争力のあるコンテンツを支援するために地盤を固めたいと考えています。具体的には、将来登場するゲームトークンの流動性を保証するために、オアシス(OAS)の流動性を向上させ、価値を高めていく計画です。」
「|取材・執筆:増田隆幸|撮影:CoinDesk JAPAN編集部」